“効く”という根拠がない治療を勧めるわけにはいかない
「勧めません。その治療は高額なのですか?」
Cさん「高いようです。1回100万円以上かも……」
「本当に効くと期待ができる治療法なら、臨床試験として患者の同意を得て被験者として参加いただき、保険適用に向けて治療結果が集積されます。当然、患者は無料です。高額の治療費はあり得ないと思います」
Cさん「免疫療法は体にやさしいらしいのです。効かないとしてもダメでもともと、少しは延命効果があるのではないかと思ったのですが……。高額でも命には代えられません」
「そう考えるのは、無理もないことかもしれません。でも、そんなわらをもつかむ気持ちにつけ込む心ない人もいるのです。お金儲けに利用されたくはないですよね? 私は、『あなた次第だ。治療を受けたかったら受けたらどうですか?』とは言いません。それでは相談に来られた方に失礼だと思うのです。私は『効かない』と思いますから勧めません」
◇ ◇ ◇
免疫療法は、長年たくさんの臨床試験が行われてきましたが、成功したものはありませんでした。近年になって、やっと免疫チェックポイント阻害薬や、白血病のCAR―T細胞を使ったがん免疫治療製剤が出てきたのです。そうした経緯もあって、Cさんが質問された治療法に対し、あれもダメ、これも勧めない――そう言い続けてしまいました。