健康寿命は経済力で決まる(4)輸入医薬品や医療材料が危ない
医薬品や医療材料が、とんでもない状況になりつつあります。以前から輸入超過だったのですが、コロナ前から貿易赤字が増え始め、2022年の統計によれば、医薬品が4.6兆円、医療材料が1.8兆円、合わせて6.4兆円の赤字となっています。コロナワクチンの緊急輸入などもありましたが、23年以降も赤字幅が拡大し続けているとみられています。
とくに円安が大きく影響しそうです。22年当初は、1ドル=110円前後で推移していましたが、最近は145円前後です。単純に言って、輸入品は約30%の値上がりになります。
技術の進歩も無視できません。医薬品市場は、世界的にバイオ医薬に大きくシフトしています。がん、アトピー性皮膚炎、糖尿病、関節リウマチなどで高い効果を発揮していますし、話題の肥満治療薬「ウゴービ」もバイオ医薬の仲間です。
ところが日本の製薬会社は、この分野が得意ではありません。バイオ医薬の世界売上高上位45品目のうち、日本発のものはたった2品目です(医薬産業政策研究所)。
医療材料の分野も深刻です。人工関節や脊椎固定器具、埋め込み型ペースメーカー、白内障の眼内レンズなど、多くが輸入品で占められています。それらには「保険償還価格」が付いています。病院は、必要なものを輸入業者などから購入し、使用後に健保組合などに請求します。その金額のことです。しかし円安で購入価格が上がっても、償還価格は変わらないため、使えば使うほど病院が赤字をかぶることになるのです。