認知症家族へのイライラが抑えられない…つい怒鳴って自己嫌悪
施設なんかに入れて、親不孝者! 母親からの罵倒がつらい
2年前からお母さんが介護施設で暮らしているという男性(60代)。だいたい月1回くらいのペースで施設へ面会に行っているそうですが、その都度、お母さんから罵倒されるのがつらいと話します。
「こんなところに入れて、あんたは親不孝者だ」「ここでは何かしようとすると止められる。好きなことができない」「ご飯がおいしくない。味気ない」「年寄りばかりで話が合わない。嫌だ」--。
最初のうちは、「そんなことはないよ」「スタッフの皆さんも、よくしてくれているでしょう」などと返していたそうですが、言い返せば言い返すほど、お母さんはよりヒートアップしてしまう。だから今は、お母さんがいろいろ言う間、じっと黙って聞いているようにしているそうです。
「認知症だから仕方ないのかな、と思って我慢しています」(男性)
実際にお母さんにお目にかかったわけではないものの、私が男性に問いかけたのは「お母さんがおっしゃっていることは、認知症だから、なのですか?」。
認知症の家族と接していると、その言動を一様に「認知症だから」と解釈してしまいがちです。自分が受け入れ難いことであればあるほど、その傾向があるように思います。
しかし客観的に見ると、実はそれが「認知症だから」の言動ではなく、なんらかの訴えであることはよくあります。
認知症でなかった頃は、実の息子とはいえ遠慮があって言わないようにしていたことが、実の息子だからこそ遠慮なく言えるようになった、真の気持ち、欲求である可能性です。
この男性のお母さんのケースでいえば、もしかしたら、息子にもっと会いにきてもらいたいのかもしれない。長年築き上げてきた趣味嗜好に、施設側が提供できることが合っていないのかもしれない。外出して、さまざまな刺激に触れたいのかもしれない。
対応できることもあれば、そう簡単には応じられないこともあるでしょう。しかし「認知症だから」と聞き流すよりは、「お母さんは……を希望しているのだな」と受け止め、対処できる方法がないか探る方が、違った展開を得られるかもしれないのです。