「お化粧」は認知機能にどんな影響を与える? 岡山大研究チームが発表
「お化粧をすると気持ちが華やかになる/明るい気持ちになる」といった話をよく耳にします。お化粧経験がある人では、大いにうなずくかもしれませんね。お化粧が認知症患者さんにどのような影響を及ぼすかについて、岡山大学の先生方が興味深い研究結果を発表しています。
研究を行ったのは、同大学大学院医歯薬学総合研究科脳神経内科学の阿部康二教授、岡山大学病院の森原隆太助教、田所功医員らのグループ。日本介護美容セラピスト協会の谷都美子代表理事らと共同で臨床研究を実施しました(肩書などは研究当時)。
対象は、施設に入所中の女性認知症患者さん36人です。2つのグループに分け、一方の19人にはスキンケアとお化粧を、もう一方の17人にはスキンケアだけを行いました。これを2週間ごとに実施し、認知機能(MMSE、長谷川式)、情動機能(老年期うつスケール、アパシースケール、阿部式BPSDスコア)、ADL(日常生活動作)、見た目年齢・感情の変化を調べたのです。
するとお化粧の群で、情動機能のスコアである阿部式BPSDがお化粧直後から有意に改善。AIを用いた顔解析では、見た目年齢が1.9歳若返り、喜びが10.7%増加しているという結果が示されました。
また長期的な変化では、お化粧の群でMMSEのスコアが上がり、認知機能の改善が見られました。
お化粧をすることで生活をより豊かにすることを目指す療法を化粧療法といい、これまでも認知症にいいのではないかと考えられてきましたが、医学的な根拠は不十分でした。岡山大学の先生方の研究は、初めて有効性を示したものになります。