夕月 清水淳子社長(1)東日本大震災で甚大被害を受けた「老舗かまぼこメーカー」復活の軌跡
「♪ゆーゆー夕月食べましょうー、ゆーゆー夕月かまぼこだー……」
1980年代にこんなテレビCMで一躍、人気ブランドとなった老舗かまぼこメーカー「株式会社夕月」。創業は1962年。前身の「マルヤス水産」が1951年に産声を上げたので、合わせて72年の歴史を刻む。
本社・工場は太平洋を望む福島県いわき市泉町にあり、主力の板付きかまぼこ「夕月レッド」と「夕月ホワイト」は合計日産10万本。日本一の生産本数を誇る。
清水淳子社長は1962年、いわき市生まれ。昨年、還暦を迎えた4代目である。
「マルヤス水産は元々、小名浜港から8キロほど北東の江名港で干物などの水産加工業を営んでいました。江名港は今でこそ地方漁港ですが、かつてはベーリング海やオホーツク海で操業する遠洋漁業の一大拠点港として、県内屈指の漁獲量だったんですよ」
福島県から宮城県の沖合は親潮と黒潮がぶつかる好漁場。古くから練り製品の原料となる白身魚が豊富に水揚げされてきた。そのため、福島県では1950年代からかまぼこ生産が急増し、2007年版「蒲鉾(かまぼこ)年鑑」によると「包装かまぼこ」の生産量は全国一に。その中心地がいわき市だった。