大衛 加藤優社長(1)日本初の生理用ナプキンの製造販売会社、創業72年の4代目
“amethyst(アメジスト)”のブランド名で知られ、出産(あるいは立ち会い)の際に、お産パッドや腹帯などを目にしたことがある人もいるのではないだろうか。
戦後、脱脂綿やガーゼ、絆創膏などの衛生用品の開発からスタートし、現在は、妊娠・出産をサポートする大衛株式会社。創業72年となる老舗メーカーを牽引するのは、4代目となる加藤優氏だ。
「特に父から後を継いで欲しいと言われたことはなかったのですが、大学院を卒業し、伊藤忠商事に入社したばかりの頃に祖父が亡くなりました。当社の創業メンバーから『商社の仕事は誰でもできるが、大衛は曽祖父、祖父が起こした会社なのだから、加藤家唯一の男孫であるあなた(私)がしっかりつないでいくことが大事だ』と諭され、家業を継ぐことを意識するようになりました」
■京大時代は脳科学研究に没頭
もともとは、京都大学、大学院で脳科学の研究に没頭し、研究者を目指していた。
「数学が得意で、学校の勉強だけでは物足りず、難しい問題に次々にチャレンジしていました。昔から、好きなことには次から次へと打ち込む性格でしたね。地元大阪ではなく京都の大学に進学したのも、司馬遼太郎をはじめとした歴史小説をよく読んでおり、日本の歴史の中心である京都に住みたいという思いから目指しました。姉が医学部に進学したことをはじめ、私の家族は医療従事者が多いんです。社会に役立つ仕事=医療の仕事という認識は幼少の頃から、なんとなく感じていました。ただ、採血の際に自分の血を見て気分が悪くなったり、医療ドラマのオペシーンが見られなかったりと、自分が直接的に医療現場に携わることは難しいとは思っていました。化学も得意だったため、結局、薬学部に進学しました。特に脳科学に興味が湧き、大学院時代は、アルツハイマー病の原因物質の研究に明け暮れていました」