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小沢コージ自動車ジャーナリスト

雑誌、web、ラジオ、テレビなどで活躍中の自動車ジャーナリスト。『NAVI』編集部で鍛え、『SPA!』で育ち、現在『ベストカー』『webCG』『日経電子版』『週刊プレイボーイ』『CAR SENSOR EDGE』『MONOMAX』『carview』など連載多数。TBSラジオ『週刊自動車批評 小沢コージのカーグルメ』パーソナリティー。著書に『クルマ界のすごい12人』(新潮新書)、『車の運転が怖い人のためのドライブ上達読本』(宝島社)、『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた 27人のトビウオジャパン』(集英社)など。愛車はBMWミニとホンダN-BOXと、一時ロールスロイス。趣味はサッカーとスキーとテニス。横浜市出身。

ひっさびさの超ゴージャス&激ワルSUV BMW XMに乗った! …で、一体誰が買う?

公開日: 更新日:

BMW XM(車両価格:¥21,300,000/税込み~)

 な、なんじゃこりゃ? 見るなりそのアヴァンギャルドすぎる存在感に言葉を失ってしまったぜ。

 それは新型BMW XM。BMWの硬派なMモデルをはじめ、モータースポーツ活動を担当する「M社」が作ったひさびさの専用モデルな……だけじゃない。

 サイズからしてフツーじゃなく、全長5m11cmで全幅ほぼ2m。ホイールベースは3m超えで、車重はほぼ2.7トン。近づくと「正直狭い日本の世田谷あたりじゃ乗りたくないなぁ」と思える異様なデカさ。価格は安くても2130万円。万が一宝くじが当たったとしても、普通のサラリーマンでは買う気すら起きないだろう。

漂いまくるダークなオーラ

 デザインも凄く、巨大な鼻の如きキドニーグリルは、金色に彩られると同時に内側にLEDリングが光っており、横の超薄型LEDヘッドライトはまさしく怒った人の目のよう。前後バンパーは複雑なエッジが絡み合ったワイルドすぎる造形で、オマケにボディカラーはド派手なツートーン。タイヤも海外のイカれたカスタムカーぐらいじゃないとお目にかかれない超大径な23インチホイール付き。

 威圧感だけじゃない。普通のリッチマンには乗りこなせない、芸能人ぐらいじゃないとクルマ負けしてしまいそうなダークなオーラが漂いまくっているのだ。

 インテリアもフツーじゃない。運転席前を覆う超横長で巨大なBMWカーブドディスプレイはもちろん、明るいキャラメル色とグリーンで覆われたツートンインパネと、柔らかなメリノレザーを使ったシートは超アグレッシブ。クルマというよりパリかロンドンのオシャレなナイトクラブにでもまぎれ込んだ気分だ。

快適でスムーズで視界高くて図体バカデカくて、めちゃ速い

 それでいて走りは想定以上に上質で滑らか。もちろんゴム部の薄い超大径タイヤがゆえ、路面の継ぎ目では「ブチっ」とゴムが切れたようなショックが時々入る。

 だがそれ以外は大きく武骨なSUVとは思えない繊細さと柔らかさ。乗り心地は上質で、何よりしっとり滑らかなパワー感が凄い。イマドキ4.4ℓV8ツインターボ+大容量モーターによるPHEVシステムを持ち、システム最高出力は653psで最大トルクは800Nm。

 カタログ上はフル充電から100km程度はEV走行が可能で、最初はスーッと静かにかつ、巨人の手で押さされたように進む。だがひと度アクセルを深く踏むと、4.4ℓV8エンジンが暴力的に目覚め、刺激的なサウンドと共にヤバい加速を見せる。快適でスムーズで視界高くて図体バカデカくて、めちゃ速いのだ。

この超ワル車を買うなら…

 マジメな日本人エンジニアには絶対作れない「ワルさ」「ゴージャスさ」「威圧感」の塊。強いてあげればゴージャスミニバンの代名詞、トヨタ・アルファードの最上級グレードエグゼクティブサルーンを金ピカに塗って赤内装に仕立てたら対抗できるかもしれない。

 きっとこの複雑化したゲンダイ社会には、こういう歌舞伎な高級SUVを欲しがるお金持ちが存在するのだろう。

 具体的には、突拍子もない切り口で短期間で大稼ぎした若手YouTuberなんかが買っちゃうのではないだろうか……などと小市民なおっさん自動車ジャーナリストは勝手に思っちゃうのであった。

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