フェードボールは体をシャープに使う
■体の回転で左に振り切る
マスターズの季節が来ると今でも河野高明プロのことを思い出す。身長162センチ、体重60キロの小さい体でマスターズに5回出場。初出場の1969年13位、翌70年12位と大健闘し、4回もイーグルをとっている。見上げるような大男に交じって、飛ばすことでも負けていなかった。
マスターズから帰って、チャンピオンズ・トーナメントという試合でビッグスギこと杉本英世プロと優勝を争ったときのことを今でもよく覚えている。
ジャンボ尾崎が登場する前のことで、河野、杉本、それに安田春雄プロが和製ビッグスリー(3強)といわれていた時代だ。
身長179センチ、体重90キロという日本人離れした杉本を、河野はときどきアウトドライブすることがあった。
「胴長、短足の日本人にはフックよりスライスのほうが合っている」と言って、河野は徹底したフェードヒッターだった。
「長身で手足の長い欧米人は、ニーアクションを使って腕の振りを主体にして真っすぐ振り抜いていけるので、フック系のボールが合っていると思う。しかし背の小さい胴長族は、腕を主体にしてひざを使って振ったら球が上がらないので、あまり飛ばない。体の中心(腰)をシャープに使って、腕力に頼らずに体の回転で左に振り切ってスライス系の球筋のほうが飛ぶ」