北上次郎のこれが面白極上本だ!
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「僕らだって扉くらい開けられる」行成薫著
超能力者たちを描く連作集だ。ただし、超能力の持ち主は、その能力を手にしたことを喜んではいない。なぜなら、たとえば会社員の今村心司は1日1回だけ使える念動力(テレキネシス)を持っているが、触れなくても…
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「火定」澤田瞳子著
施薬院は、病人の収容・治療を行う施設で、730年に皇后によって設立された。ただし、藤原氏の積善を喧伝するためにつくられたにすぎない施設なので、宮城内の医師は真剣に協力せず、金にも出世にも興味を持たな…
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「鍼灸日和」未上タニ著
祖問大慶28歳、小太り丸顔の鍼灸師だ。この男、たとえばコンビニの雑誌売り場の前でガラの悪い男たちが床に座っていると「ちょっと邪魔なんだけど」と注意するのだ。男たちと揉め事になるなんて、まったく考えな…
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「夜の動物園」ジン・フィリップス著、羽田詩津子訳
銃を持った男が動物園を占拠する。閉園間近だったので、多くの客は動物園をあとにしていたが、中にはまだ園内に残っている人間もいて、それが主人公の親子だ。占拠した男の目的が何であるのかはわからない。男は一…
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「ランチ酒」原田ひ香著
武蔵小山から中野坂上まで、さまざまな街のランチを食べ歩く31歳犬森祥子の日々を描く連作長編である。これは、ヒロイン祥子の職業に関係している。彼女は「見守り屋」なのだ。これは、深夜の見守り、付き添いな…
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「台湾人の歌舞伎町」稲葉佳子、青池憲司著
帯に、「らんぶる」も「スカラ座」も「風林会館」も台湾人がつくった、とあるので、思わず手に取ったが、読み始めるとやめられなくなる。 新宿、もうひとつの戦後史、という副題の付いた書である。だから…
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「波濤の城」五十嵐貴久著
全長300メートル、11階建ての豪華客船が、整備の不備、不慮の事故、そして巨大台風に翻弄されるパニック小説である。 この手の小説の常套ではあるが、さまざまな人間の事情を描いていて、これがまず…
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「地の星 なでし子物語」伊吹有喜著
静岡の山間部で山林業と養蚕業を営む遠藤家は、代々得た富を集落に惜しみなく投じて地元に貢献してきた。平成のいま、遠藤家は凋落しているものの、本家の豪壮な邸宅常夏荘の女主人である耀子に対して、敬意をもっ…
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「屍人荘の殺人」今村昌弘著
いやあ、楽しい。第27回の鮎川哲也賞受賞作だが、読み始めたらやめられず、一気読みである。困ったのは、その基本設定をここで紹介できないことだ。その基本設定は91ページのところで明らかになる。全体が30…
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「空からのぞいた桃太郎」影山徹著
絵本である。かなり異色の絵本である。あの有名な桃太郎のお話を変えてしまったわけではない。話はそのままだ。しかし、絵が異色。書名にあるように、すべて俯瞰で(つまり上からの視点で)描いているのだ。空から…
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「墨の香」梶よう子著
書の師匠、巻菱湖が雪江の指南所にやってきて、雪江の教え子たちの前で筆を執るシーンがある。 書くのはその日のお題である「禮」という字。いつもは酔っぱらっている菱湖だが、紙へ向かうと姿勢が変わり…
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「弱虫日記」足立紳著
2015年の「百円の恋」で日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞し、翌年「14の夜」で監督デビューした足立紳は、小説も「乳房に蚊」「14の夜」と上梓している。どちらも登場人物が頼りなかったり情けなかった…
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「この世の春」(上・下)宮部みゆき著
宮部みゆきの作家生活30周年記念作品であり、2017年の新刊はこれだけというから、これはぜひ読まねばならない。しかしこれは、時代小説なのだが同時にミステリーでもあるので、粗筋紹介には注意が必要だ。 …
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「東の果て、夜」 へビル・ビバリー著 熊谷千寿訳
ロードノベルである。語り手は15歳の少年イースト。向かうのは2000マイルも離れたウィスコンシン。旅に同行するのは、13歳の弟タイと、年上のマイケルとウォルター。このロードノベルが異色なのは、旅の目…
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「ビンボーの女王」尾崎将也著
ヒロインの立花麻衣子はテレビのアシスタントディレクター。ほとんどブラック企業に近い労働に悲鳴を上げて、ついに退職。ところが辞めてみると、再就職はなかなか厳しい。しかも住まいも失ったので、ネットカフェ…
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「地獄の犬たち」深町秋生著
凄まじい小説だ。帯に「先鋭化した暴力団に潜入した警官」とあるので、潜入ものであることは最初から明らかにされている。となると、その正体がいつ露見するのか、そういうサスペンスが中心になっていくのかと思う…
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「暗殺者の飛躍(上・下)」マーク・グリーニー著、伏見威蕃訳
すごいすごい。もうくらくらである。 フリーのヒットマン、コート・ジェントリーを主人公とするシリーズは、「暗殺者グレイマン」「暗殺者の正義」「暗殺者の鎮魂」「暗殺者の復讐」「暗殺者の反撃」とい…
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「腐れ梅」澤田瞳子著
諸国の飢餓干ばつは凄まじく、政情不安の続く平安の世に、菅原道真をまつる社が出来ても不思議ではない。遠く太宰府で亡くなった不遇の右大臣の怨霊を鎮めなければもっと悪いことが起こる、となれば人々は大枚の金…
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「南風吹く」森谷明子著
俳句甲子園は、高校生を対象にした俳句コンクールで1998年に始まった。地方大会を勝ち抜いた36チームが集まり、毎年8月に松山市で行われるが、第20回の今年は8月19日から2日間にわたって開かれた。そ…
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「君が夏を走らせる」瀬尾まいこ著
16歳の大田少年が、1歳10カ月の女の子の面倒を見る話である。中武先輩から頼まれたのだ。先輩は高校を1年で中退し、しばらくふらふらしていたが、結婚して子供が生まれてからは建築資材を扱う会社で真面目に…