「暗殺者の飛躍(上・下)」マーク・グリーニー著、伏見威蕃訳
すごいすごい。もうくらくらである。
フリーのヒットマン、コート・ジェントリーを主人公とするシリーズは、「暗殺者グレイマン」「暗殺者の正義」「暗殺者の鎮魂」「暗殺者の復讐」「暗殺者の反撃」という5部作で、第1期が完結した。本書から始まるのは第2期である。すべてリセットした上での新スタートであるので、これまでの5部作を未読の方はここから読み始めることをぜひおすすめしたい。
中国サイバー戦部隊の天才ハッカー茫が逃亡するのが物語の幕開けだ。アメリカは当然、茫を生きたまま捕らえることを目標に、コート・ジェントリーを派遣する。ちなみに、ジェントリーはCIA局員ではない。依頼を受けて香港へ飛ぶ。中国人民解放軍の保全・防諜部部長の戴は、茫を抹殺するために特殊部隊を指揮して追いかけてくる。そこに絡んでくるのがロシア対外情報庁。アメリカもロシアも、台頭する中国を叩くために茫を必要とするのだ。この三つ巴だけでも大混乱なのに、香港、ベトナム、タイの犯罪組織がカネのにおいをかぎつけて絡んでくる。もうぐちゃぐちゃである。
このシリーズは、畳みかけるアクションの量と迫力で、冒険小説ファンの心を掴んだが、本書も例外ではない。息詰まるアクションがこれでもかこれでもかと展開するのだ。いやはや、すごい。グリーニー、相変わらず絶好調だ。
(早川書房 各860円+税)