「ビンボーの女王」尾崎将也著
ヒロインの立花麻衣子はテレビのアシスタントディレクター。ほとんどブラック企業に近い労働に悲鳴を上げて、ついに退職。ところが辞めてみると、再就職はなかなか厳しい。しかも住まいも失ったので、ネットカフェに寝泊まりしながら、日銭欲しさにティッシュ配りのアルバイトの日々。つまり突然、ネットカフェ難民になるのだ。そういう貧困女子の生活が、これでもかこれでもかと描かれていく。親に頼れないのには事情がある。
娘を勝手に連帯保証人にしたために母親の借金を背負わされたのである。そんな母親には頼れない。麻衣子はひとりで生きていかざるを得ない。というわけで、ヒロインの苦闘の日々が始まっていく。ストーリーの先を紹介するのはマナー違反だが、帯に書いてあることなので、立てこもり事件に巻き込まれる、ということだけは紹介してもいいだろう。このあとの展開が面白いが、いくらなんでもこのあとどうなるかという紹介はぐっと我慢。
著者は「梅ちゃん先生」などで知られる著名な脚本家で、これが小説の第1作。「小野寺の弟・小野寺の姉」の西田征史、「犯罪者」「天上の葦」の太田愛、「永い言い訳」の西川美和など、他ジャンルで活躍している人の小説は新鮮な作品が多いものだが、本書も例外ではない。問題は、この人たちはなかなか次作を書いてくれないこと。ほかに本業を持っているから仕方がないけれど、そこをなんとかお願いしたい。
(河出書房新社 1300円+税)