「江戸の宇宙論」池内了著
日本人は、江戸時代の1780~1820年の短い間に、西洋から天文学や宇宙論を学ぶ中で、無限の空間に無限個の恒星や惑星が存在するという現代にも通用する無限宇宙論を構想し、当時の宇宙論の世界の第一線に立っていたという。
その中心を担ったのが、絵師の司馬江漢、元長崎通詞(オランダ語の通訳)・志筑(しづき)忠雄、大名貸し「升屋」の番頭・山片蟠桃の3人の人物だった。3人に面識はなかったが、志筑は翻訳書「暦象新書」で、ニュートン力学を日本で最初に紹介。江漢は、志筑の翻訳の教師で地動説を日本に紹介した本木良永との出会いで地動説を知る。さらに蟠桃は「暦象新書」を熟読して自らの宇宙論の骨格としている。
3人の事績を紹介しながら、その理論の先見性と独自性を再評価する。
(集英社 1034円)