「江戸幕府の感染症対策」安藤優一郎著
今回のコロナ禍は現代の日本人が初めて体験するパンデミックだが、歴史を振り返れば、奈良時代から疫病の流行はあった。天平9(737)年には、疱瘡(ほうそう=天然痘)が大流行して死者が続出、朝廷を牛耳っていた公卿の藤原4兄弟までもが命を落とした。
江戸時代も感染症の流行に苦しめられ、特に人口密度が高かった巨大都市・江戸はその被害を最も受けやすく、疱瘡・麻疹・インフルエンザ、そして幕末にはコレラで多くの命が奪われた。それでも都市崩壊が起きなかったのは、幕府が医療政策だけでなく、現代でいう社会福祉政策に力を入れたからだという。
本書は、江戸時代に流行した感染症の詳細と、それに対応した知られざる幕府の危機管理術を解説した歴史テキスト。
(集英社 800円+税)