「キャプテン・フィリップス」ポール・グリーングラス監督
――社会で働く男のリスクとして捉えると、決して対岸の火事ではなくなってきています。
「昨今の世界情勢を捉えているのは間違いないでしょうね。海賊がソマリアの貧相な若者たちで、目的が殺しやテロではなく生活、つまり金で、元締からせき立てられて大国アメリカの船を襲っている。貧富というヒエラルキーが背景に横たわっているところといい、日本社会や周辺国との関係にも当てはまる事態と言えなくない。忍び寄ってくるリスク、危険に対して、少なくとも、頭の中で考えて、想定しておく。部下のいる立場なら、その責任を再確認しておいた方がいいかも知れません。どんなに優れた防御システムが張り巡らされていたとしても、救出を頼めなかったり、この映画のように、すぐに来てもらえるとは限らない。結局、最後は自分や部下、家族の身を守るのは自分しかいないということでしょう」
――社内のポスト争いで負けずに踏ん張ったとしても、その会社が倒産といった、覚悟や想定を超えるリスクもあります。
「理不尽で、どんなに抵抗しても突っ張っても、かなわないことはあります。そうなってしまったら潔く甘んじて、その状況をこちらからのみ込むくらいの気概で受け入れちゃう。どんな悪条件でも、不平や不満を言っているよりはマシです。ある種の諦念といいますか、僕はそういう時、こうつぶやくようにしています。『ま、いっか』『それがどうした』『人それぞれ』と。逆境に陥った時などで、状況を好転させるためにも、前向きにならなければ始まりませんからね」