「キャプテン・フィリップス」ポール・グリーングラス監督
――嫌な上司や足を引っ張るライバルとの日々の戦いに、有効な手だては?
「潔く同居しようというくらい、腹を据えることだと思います。無視したり、排除しようとするのは大人の対応ではないし、出身も性別も年代も異なる人々の集合体が会社であり社会なのですから、相性が合わなくて当たり前というところから始める。マラソンでも、ひとりで走るより、隣にライバルがいた方がタイムが良いじゃないですか」
――長引く不況による業績悪化の上、増税などで追い打ちを掛けられ、中高年サラリーマンは苦しくなるばかりです。
「給料が少ないとか、働かされているという考えから脱却するのが手かもしれません。どんな会社であれ、そこを選んで入ったのは自分ですし、どんなに小さな歯車であっても、それが社会というシステムに組み込まれている以上、意義がある。心掛けひとつで、世の中は変わって見えることもあると思います」
――映画「キャプテン・フィリップス」は、そうした心掛けを持てるきっかけになりますか。
「僕は漫画家じゃなければ、映画監督になりたかった。漫画を描くのと、映画の絵コンテは近いと思うし、どちらも日々の暮らしでは体験できないことを疑似体験できたりするのが面白いんです。映画では『2001年宇宙の旅』に衝撃を受けて以来、ずっと見続けていますが、『キャプテン・フィリップス』も、文句なしに面白い。サラリーマンの方には、リスク管理を考える上での究極のシミュレーションになるかもしれませんね」