ソラシド本坊 “現代版蟹工船”で描いた下流芸人の心の叫び
「お笑い芸人」といわれて私たちがイメージするのは、テレビに出ているごく一部の売れっ子だけ。それ以外の名もない芸人たちの“素性”はあまり知られていない。
その大半は安いアパートに住み、その日暮らしの貧困生活を送っている。「プロレタリア芸人」(扶桑社)を書いたソラシドの本坊元児(37)もその一人だ。
お笑いの仕事は月2回のライブ出演だけ。残りの28日間は建設現場などで肉体労働に精を出している。本坊はガリガリ体形の虚弱体質。それなのに、カネに困って体力勝負の日雇い労働に手を染めてしまったのが運の尽き。彼を待ち受けていたのは、とてつもなく過酷な労働環境だった。
一緒に働く屈強な男たちには「向いてない」「仕事を変えろ」と冷たくあしらわれた。職人が使う専門用語が理解できず、見当違いの返事をしてドヤされた。解体工事では石膏ボードや断熱材の粉塵が皮膚に突き刺さり、かゆくてかゆくてたまらない。規定の防護服を着用せず、放射線を浴びた中性子フィルターの交換作業をしたこともあった。解体現場でコンクリ片の付いたアスベストをびっしり浴びた。