ソラシド本坊 “現代版蟹工船”で描いた下流芸人の心の叫び
真っ暗なビルでの配管清掃作業中、ヘッドライトが消えて命からがら救出されたこともあった。一緒に働く仲間との絆を感じたその直後、食事休憩で荷物を開くと携帯ゲーム機を盗まれていた。どこを取っても全く救いのない、壮絶なバイト生活が続く。
そんな本坊に一筋の光が差す。バイトでの出来事を面白おかしくライブで語っていたら、それが評判を呼び、次々にテレビ出演が決まったのだ。「芸人報道」「アメトーーク!」といった人気番組にも出演。このまま売れてバイトを辞められるかもしれない――そう思ったのもつかの間、仕事はパッタリと途絶えてしまう。本坊は悲しい現実に気付いた。
「なぜみんながテレビでアルバイトの話をしないのかようやく分かりました。ヨゴレやからです。道端で裸になれば、キャーッ! とは言われます。ただそれだけです。僕は先のない道を走っていただけでした」
この手の本にありがちな「本人が売れてハッピーエンド」という結末すら訪れない、現在進行形の悲劇。下流芸人の心の叫びが描かれた“現代の蟹工船”だ。