「直虎」脚本・森下佳子氏が語るオファー時の迷いと覚悟
もともと大河は日本一の大型娯楽ドラマづくりを目指して始まった。決して歴史的事実に忠実なだけのお勉強ドラマではない。それを踏まえた上で、「歴史の実証に人間が巻き込まれていくだけではなく、実証をつくっているのは人間なんだと感じてもらいたい。追い詰められた人間の強さを表現したい」と意気込む。
■過去には脚本家が途中交代したことも
そんな森下氏が歴代の大河作品の中でもっとも「肌に合った」作品は、96年の「秀吉」(竹中直人主演、竹山洋脚本)。「出演者の熱量が高く、血も通っている。食い入るように見ました」。
手本となる作品が生まれる一方で、過去には視聴率もストーリーも迷走した揚げ句、脚本家が途中から交代する作品もあった。一年間、“完走”する自信は? と率直に尋ねると、「正直、ありません。まだ私ひとりで書き切れるか分かりません。ごめんなさいっ。でも、頑張ります!」と口元を引き締めた。
主演の柴咲同様、森下氏にとっても初めての大河。16年12月半ば、井伊美術館(京都市)が「実は井伊直虎は男だった!?」という新説を発表してちょっとした騒動になったが、まさに追い詰められてからが真骨頂のようだ。
▽もりした・よしこ 1971年生まれ、大阪府出身。東大文学部卒。00年の連ドラ「平成夫婦茶碗~ドケチの花道」で脚本家デビュー。代表作は「世界の中心で、愛をさけぶ」「JIN―仁―」「天皇の料理番」「ごちそうさん」など。第22回橋田賞、第32回向田邦子賞受賞。