立川談慶さんが語る落語と酒 「登場人物はみんな下戸」
日本人は遺伝子とか分解酵素の問題で、欧米人に比べると下戸だそうです。それをお互いにわかり合い、酒に弱くても許せる文化があるから、落語にもなるわけです。落語は共感ですから。
■談志師匠に「俺んチで吐いたらクビ」と言われて……
私は弱かったですよ。今でこそ、ビールの後に日本酒を1合ほど飲めますが、サラリーマン時代は下戸も下戸。最初の赴任先が福岡なので鍛えられましたが、中ジョッキ半分を超すぐらいで限界でしたからしれてます。そしていざ入門しましたら、立川流の場合、見習いと前座は師匠の前では禁酒禁煙なんです。目が届かないところで飲むのは問題ないのですが、酔って師匠の前に出るなんてのはご法度でした。
ところが、たまに師匠の機嫌がいいと「おまえも飲むか」とくる。まだ前座の頃でしたねえ。大好きなミュージカルをテレビでご覧になって上機嫌、「珍しいもの飲ませてやる」と言い出しまして、冷凍庫から出してきたのがアルコール度数96度のウオツカ「スピリタス」。飲んだ途端、口の中が火がついたみたいに熱くなる蒸留酒です。これをお猪口でクイッと飲み、すかさずチェイサーの氷水を飲んで冷やす。口と喉に灼熱と極寒が交互にやってくる、乱暴な飲み方です。