空前の美少年 12歳の八代目染五郎が演じる義経の神々しさ
義経がセリフを言うシーンでは客席は静まりかえり、劇場中の視線が集中し、緊張感に満ちていた。息子がこんなに目立っては、幸四郎もうかうかしていられない。
新橋演舞場は海老蔵が座頭。昼の部で「にらみ」をしてみせる。これを見ると1年間、風邪をひかないという言い伝えのあるものだ。こういう古式ゆかしいものは毎年やって欲しい。
夜の部は新作「日本むかし話」で、桃太郎、浦島太郎、花咲かじいさん、一寸法師、かぐや姫などがひとつの長い物語になっている。海老蔵の娘・堀越麗禾が「かぐや姫」の役で出演しているのが話題だ。海老蔵家も幸四郎家も、舞台と「家族の物語」がないまぜとなり、観客を楽しませる。これも歌舞伎の魅力のひとつだ。
国立劇場の「世界花小栗判官」では、座頭の尾上菊五郎が敵役にまわり、菊之助が主人公の小栗判官を演じ、松緑にも一幕が任されている。
幸四郎、海老蔵、菊之助、松緑という40代の青年役者が前面に立つ年明けだ。
(作家・中川右介)