「ある殺し屋」時系列を崩した裏切りのいきさつが面白い

公開日: 更新日:

 塩沢は店では和服、仕事でも和服でパーティー会場に潜り込む。拳銃を持っていながら針を使い、標的のうなじを刺して即死させる。ドラマ「必殺仕掛人」(72~73年)を思い出してしまう。

 雷蔵の洋服姿もいい。後半はダークスーツをまとったニヒルな塩沢がボロアパートを借りて麻薬強奪を立案するが、ここに罠(わな)が仕掛けられている。前田と圭子が塩沢を殺してカネを奪おうと企んでいるのだ。

 女がセックスによって男を裏切るのはヤクザ映画で見かける光景。本作でも圭子が愛欲と金銭欲に駆られる。時系列を崩した構成のため裏切りのいきさつが一層面白く味わえるという寸法だ。だが殺し屋は常に冷静沈着。細心の注意で落とし穴を回避し、かっこよく去って行く。

 ちなみに雷蔵は69年に37歳で死去。小池は85年に54歳で、成田は90年に55歳で没した。殺しに絡んだ男たちがそろって早死にしたことになる。 (森田健司)

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動