おおたわ史絵さんに聞く 刑務所で受刑者の診療をする理由
医師、作家として情報番組のコメンテーターで活躍中の、おおたわ史絵さん(54)。この6月に刑務所や少年院といった受刑者矯正施設の矯正医官に就任し、多忙な日々を送っているが、就任した理由とは……。
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「怖くないですか?」
私が刑務所で働いていることを知ると、大半の方は驚いてこうおっしゃいます。無理もないですよね。そこにいる私の患者はみな受刑者ですから。矯正医療を始めたのは今年の春。なぜかって? では、その理由をお話ししましょう。
みなさんは日本の罪状で一番多いのが窃盗と覚醒剤だということを知っていますか? どちらも再犯率の大変高い犯罪です。それはこれらが依存症と関わりのある罪だからです。
実は覚醒剤や盗み、暴力やギャンブルなどの多くには、脳の依存が関連しているのです。だめだとわかっていてもやめられない、それが依存です。
私の母は薬物依存者でした。それは私が小学生の頃から、いやもっと前から始まっていました。母は子供時代に腹膜炎を患い、腹部に後遺症を抱えていました。その痛みを和らげる目的で使用した鎮痛剤注射に対して、徐々に依存症が形成されていったのです。