【追悼】若き市原悦子さんを奮起させた二枚目スターの発言
名女優がまた一人逝ってしまった。ドラマ「家政婦は見た!」やアニメ「まんが日本昔ばなし」のナレーションなどで親しまれた女優の市原悦子さんが12日、心不全のため死去(享年82)。突然の訃報に関係者からは死を悼む声があがっている。ある舞台関係者はこう語る。
「ある女優に市原さんが演技指導をする機会があったんです。市原さんの指導は厳しいのですが、声を荒らげたりすることは一切ありません。ある時、その女優が『自信がないんです……』と泣き言を言ったんですよ。それに対し市原さんは『弱音を吐いてはいけません。女優は娑婆の女じゃないのよ。そんなふうに音を上げるなら、女優なんてやめておしまいなさい』と諭すように言ったんです。まさに『日本昔ばなし』の登場人物のように、凜としたよく通る声で。市原さんは女優として生きる覚悟、矜持を教えたかったんだと思います」
■「千葉の顔、だね」と言われ衝撃が
“女優として生きる矜持”を体現した人生だった。1936年、千葉県生まれ。銀行員の家庭で育った“おてんばエッちゃん”は、中学時代に恩師と出会い演劇に目覚める。進学校の県立千葉第一高校(現千葉高校)に進み、さらに演劇にのめりこむ。卒業後は富士銀行への入行が決まっていたが、直前に内定を辞退し俳優座へ。その決断についてかつて雑誌のインタビューでこう語っている。