森進一「襟裳岬」<後> A面かB面かで意見が真っ二つに
結局両A面ということにして、テレビの歌番組では先に「世捨人唄」を一通り歌ってビクターの社長の顔を立てました。1月に発売したので、5月くらいまでは世捨人唄を歌っていたはずです。
そして途中から「襟裳岬」に切り替えたら、秋から年末にかけてガーッて人気に火がついて、大ヒットしたのはご承知の通り。
ちなみに「襟裳岬」という全く同じ名前の曲を島倉千代子さんが先に歌っていて、その年の紅白のトリで「襟裳岬」対決になったのが話題になりました。覚えている方もいるのではないでしょうか。
私にしても「してやったり!」でうれしかったですね。当時の演歌界は北島三郎、村田英雄ら実力者揃いで、普通に作っても勝てない。だから“演歌とフォークの融合”にチャレンジしたわけなんですが、見事、当たりました。
それに比べて今の演歌は、技巧に走り過ぎていて個性がない。プロの私が聞いても誰の歌なのか区別がつかないほど。カラオケ向けに歌いやすく作ってあるのかなと思うと、ちょっと寂しいですね。
(聞き手・いからしひろき)