著者のコラム一覧
クロキタダユキ

マーシャル 法廷を変えた男(2017年、米国)

公開日: 更新日:

 黒人差別を扱った法廷映画は「アラバマ物語」をはじめ名作が並ぶ中、本作は異色だ。1940年に実際にあった裁判を映画化している。

 米国初のアフリカ系黒人の最高裁判事サーグッド・マーシャルの若き日の弁護士時代を描く。

 黒人運転手スペルは、雇い主の白人美人妻エレノアをレイプした罪で訴えられる。マーシャルはその無罪を立証すべく弁護を引き受けようとするが、担当判事が「他州の所属だから」と難癖をつけ、補佐は認めるが、法廷での発言を禁ずる。

 ピンチヒッターに抜擢されたのが、民事専門のユダヤ人弁護士サムだ。公判が始まると、意外な事実が判明する。

 法廷が開かれた当時、ナチスの台頭で、ユダヤ人は激しい差別に遭っていたはず。そんなユダヤ人とタッグを組んだマーシャルを演じるのは、昨年の大ヒット作「ブラックパンサー」で名を馳せたチャドウィック・ボーズマンだ。差別を受ける側の2人のタッグが面白い。

 2人は、白人のチンピラに襲われる目に遭いながらも、屈することなく裁判に挑む。立ち向かう姿をご機嫌なソウルミュージックが盛り上げ、軽妙にテンポ良く描く。息詰まる法廷劇との融合が絶妙だ。

 セリフは、エンドクレジットで流れるマーシャルの肉声。現在の国際情勢を先読みした彼の言葉は重い。1993年に他界した彼の実話は、見ておいて損はない佳作といえるだろう。

【連載】セリフ1つ読む映画

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • 芸能のアクセスランキング

  1. 1

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  2. 2

    人事局付に異動して2週間…中居正広問題の“キーマン”フジテレビ元編成幹部A氏は今どこで何を?

  3. 3

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  4. 4

    中居正広氏&フジテレビ問題で残された疑問…文春記事に登場する「別の男性タレント」は誰なのか?

  5. 5

    TV復帰がなくなった松本人志 “出演休止中”番組の運命は…終了しそうなのは3つか?

  1. 6

    "日枝案件"木村拓哉主演「教場 劇場版」どうなる? 演者もロケ地も難航中でも"鶴の一声"でGo!

  2. 7

    フジテレビに「女優を預けられない」大手プロが出演拒否…中居正広の女性トラブルで“蜜月関係”終わりの動き

  3. 8

    別居から4年…宮沢りえが離婚発表「新たな気持ちで前進」

  4. 9

    ビートたけし「俺なんか悪いことばっかりしたけど…」 松本人志&中居正広に語っていた自身の“引き際”

  5. 10

    フジテレビを襲う「女子アナ大流出」の危機…年収減やイメージ悪化でせっせとフリー転身画策

もっと見る

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 2

    “氷河期世代”安住紳一郎アナはなぜ炎上を阻止できず? Nキャス「氷河期特集」識者の笑顔に非難の声も

  3. 3

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  4. 4

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  5. 5

    大阪万博の「跡地利用」基本計画は“横文字てんこ盛り”で意味不明…それより赤字対策が先ちゃうか?

  1. 6

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  2. 7

    大谷「二刀流」あと1年での“強制終了”に現実味…圧巻パフォーマンスの代償、2年連続5度目の手術

  3. 8

    国民民主党は“用済み”寸前…石破首相が高校授業料無償化めぐる維新の要求に「満額回答」で大ピンチ

  4. 9

    野村監督に「不平不満を持っているようにしか見えない」と問い詰められて…

  5. 10

    「今岡、お前か?」 マル秘の “ノムラの考え” が流出すると犯人だと疑われたが…