「日本ボロ宿紀行」は深川麻衣の頑張りだけで一見の価値
2016年に乃木坂46を卒業した、深川麻衣。女優としての地上波連続ドラマ初主演が「日本ボロ宿紀行」だ。ヒロインの篠宮春子(深川)は零細芸能事務所の歌手、桜庭龍二(高橋和也)のマネジャー。経営者だった父親(平田満)が急逝し、突然社長になってしまった。同時に所属タレントは皆退社して、残留したのは桜庭だけだ。2人は売れ残りのCDを抱えて、地方営業の旅に出る。
とは言うものの、「忘れられた一発屋歌手」の復活物語ではない。2人が旅先で泊まり歩く、古くて、安くて、独特の雰囲気を持った「宿」こそが、もう一人(一軒?)の主人公だ。毎回、ドラマの冒頭で春子が言う。「歴史的価値のある古い宿から、驚くような安い宿までをひっくるめ、愛情を込めて“ボロ宿”と呼ぶのである」と。登場するのはいずれも実在の宿だ。
新潟県燕市「公楽園」は元ラブホで、お泊まりが2880円。春子と桜庭の夕食は自販機ディナーだった。また、山小屋にしか見えない群馬県嬬恋村「湯の花旅館」も、玄関に置かれた熊の剥製や巨大なサルノコシカケが、ボロ宿ムードをあおっていた。
主人公が実在の店で食事をする、同局「孤独のグルメ」の宿屋版といった構造だが、マニアック度やニッチ度が半端じゃない。何より、女優・深川麻衣が頑張っている。もう、それだけで一見の価値ありだ。