勘九郎の“けなげ”を見る 低迷「いだてん」を楽しむヒント
「志ん生が2人いて、時代が交錯するのが分かりにくい」「合戦のない大河なんて大河じゃない」「たけしの滑舌が悪く、聞きづらい」……視聴者の声を集約するとこんな感じか。1ケタ続きの低視聴率にあえぐNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺」。
さすがにNHKもテコ入れを始め、3月3日放送の第9話では、「モテキ」などの深夜ドラマや映画「バクマン」などで監督・演出を務めてきた大根仁氏を起用。大河が外部から演出家を迎えるのは異例のことだが、第9話は9.7%、10日放送の第10話は8.7%だった(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
低視聴率ばかり話題になるが、もちろん、毎週楽しみにしている視聴者も少なくない。「私もそのひとり」と話すのは、年間300本の映画、演劇を見る映画・演劇ライターの辻則彦氏だ。
「金栗四三の真面目で一生懸命、けなげな様子はまさに勘九郎さんにぴったり。ハマり役ですよ」と、主演の中村勘九郎(37)が醸し出す〈けなげさ〉について、こう分析する。
「父である中村勘三郎さんが亡くなった時、勘九郎さんはまだ31歳。実父が亡くなったその日に、京都南座で勘九郎の襲名公演を行いました。私も観劇していましたが、勘九郎さんの『どうぞ父を忘れないでください』の口上はあまりにもドラマチックで、見ている者は涙をこらえることができませんでした」