「十三人の刺客」続く残酷描写 長すぎる35分間の斬り合い
それでも家臣はこの暴君を守らねばならない。おそらく半兵衛は斉韶に仕えることをばかばかしく思っているだろう。彼は新左衛門とは剣術道場のライバル同士で、出世も競い合った。いま正義は新左衛門にある。だが武士であるかぎり、主君がいかに非道でも忠義を尽くさなければならない。サラリーマンでいえば、社員への嫌がらせが好きな2代目バカ社長の尻ぬぐいに負われる古参の重役だろうか。
斉韶がいやというほど残酷なため、新左衛門らが起ち上がる姿に拍手したくなるが、最後の決戦はやや疑問だ。刺客はわずか13人。敵は200人以上。爆薬や牛の暴走のゲリラ戦で敵を翻弄するまではいいが、その後の35分間の斬り合いは長すぎる。斬っても斬っても敵が押し寄せる。死闘が続くほどリアリティーが希薄になり、ラストの新左衛門と半兵衛の一騎打ちでは感覚が麻痺して面白さが半減してしまう。何事もやり過ぎは逆効果。短縮が無理なら、せめて一騎打ちの前に回想シーンなどを差し挟んで観客の感性を初期化するべきだった。
(森田健司/日刊ゲンダイ)