「TATTOO[刺青]あり」環境のせいか、それとも殺人鬼か
実際の事件はご存じの通り。犯人の梅川は警官と行員の計4人を射殺、女性行員を全裸にして「肉の盾」とした。「『ソドムの市』って映画を知っとるか?」と言って男性行員の耳を切断させる。これほど猟奇じみた人質事件はその後、起きていない。女性行員が毛布を身にまとって解放されたニュース映像が思い出される。
明夫は散髪や買い物で釣り銭を受け取らず、帰省のときは高価な土産物を配るなど見えを張りたがるタイプ。母親に溺愛され、母を「お母ちゃん」と慕うマザコン男だ。その揚げ句「30歳までに」と自分をせき立てる。大人になりきれない凶暴な男が幼稚な発想で生き急ぎ、そして死に急いだ。
本作を見るたびに思うことがある。梅川がもし違う環境で育っていたら、まともな社会人になっていただろうか、それとも彼は生まれたときから人殺しと残酷を楽しむ悪魔だったのかという疑問だ。昨今の無差別殺人犯もしかり。その答えは神のみぞ知るということか。
(森田健司/日刊ゲンダイ)