「女が愛して憎むとき」若尾文子と田村二郎にみる男女の業
1963年 富本壮吉監督
「女が階段を上る時」(60年、成瀬巳喜男監督)で銀座の女を描いた脚本家の菊島隆三が舞台を大阪に移した作品。
北新地でバーを営む敏子(若尾文子)は美人ママとして評判を呼び、客は敏子に男がいるのではと興味津々だ。敏子は男の影がない女として通っているが、実は東京の尾関(田宮二郎)と不倫関係。夜の飛行機で東京に向かい、逢瀬を楽しんで大阪に戻る生活を続けてきた。尾関は海外のミュージシャンを招聘する有名な呼び屋だ。敏子は尾関との関係に寂しさを感じるものの、会えば身も心も満たされる。
そんな折、敏子の店に偽物のウイスキーを売っていた業者が摘発された。刑事の尋問で敏子は尾関との密会を告白し、週刊誌で報じられる。店の客足は落ち、敏子は東京で出直そうとするが、尾関もジャズ奏者からドタキャンを受けるのだった。
偽ウイスキーの件を警察に密告した人物、男たちの好奇の目、水商売を見下して職質をかける刑事、カネを無心する元夫と、敏子の周りは敵だらけだ。敏子の師匠であるマダム理恵(森光子)の「美人のマダムは成功しない」「マダムは客の共有物や」「商売女は客に惚れたらおしまい」という言葉が水商売の難しさを言い表している。