「ELLE」父親のトラウマを引きずる女 性欲と葛藤する物語
エル ELLE(2016年 ポール・バーホーベン監督)
主演のイザベル・ユペールは1953年生まれ。本作の公開時は63歳で、ゴールデングローブ賞主演女優賞に輝いた。レイプの映画でよくぞ頑張った。
ミシェル(ユペール)は離婚歴のあるゲーム開発会社の社長。邸宅に一人で住み、親友のアンナの夫ロベールと不倫中だ。そのミシェルが自宅で暴漢にレイプされた。彼女は父親が大量殺人犯として服役中ということもあり、警察に届けずからしスプレーで警戒する。ただ、元夫のリシャールとアンナ夫妻にはレイプの事実を打ち明ける。
息子は気の強い女と同棲し、肌の色の違う子が誕生。ミシェルは向かいの若夫婦をホームパーティーに招き、夫のパトリックに心を引かれる。そんな折、ミシェルがレイプされるゲーム映像が社内のパソコンに一斉送信されるのだった……。
本作の予告編を見た人は中年女性がレイプされ、嫌がらせを受ける話だと受け取るだろうが、実はかなり趣が違う。ネタバレになるので詳しく書けないが、父親の異常犯罪というトラウマを引きずる孤独な女が性欲と葛藤する物語。
不倫相手のロベールとはセックスは楽しめるが、どこか味気ない。そうした中、レイプされる。しかもレイプ魔は加虐的だ。ミシェルは明らかに被害者である。だが何かが彼女の心と体に化学変化を起こす。レイプ魔へのシンパシーといえるかもしれない。