医師・森田豊さん “白い巨塔”を去った日が人生の分岐点に
森田豊さん(医師・ジャーナリスト 56歳)
テレビでも活躍する医師・ジャーナリストの森田豊さん。医師として分岐点となった「その瞬間」はドラマ立ち上げから監修を務める「ドクターX」のストーリーの下地となった“白い巨塔”を去った日だという。
祖父も父も医者で、父からは「大学に残って研究を続け、医学の発展のために尽くし、最終的には教授職へ」とアドバイスされてきましたから、研究論文をたくさん書き、キャリアを積んで頑張っていました。
仕事以外も「医局のためならなんでもします」のスタンスで、論文の下調べ、学会のお供、ゴルフの送り迎えまでやりました。教授回診では教授を先頭に、僕は三歩下がって歩き、研修医たちにはその後ろを歩くように指導して。それこそ「白い巨塔」の世界。だから当時の僕は「ドクターX」の大門未知子とは真逆でした。
■総合病院の部長職に移って一変…
今から約15年前に、「自分の進むべき道は、違うのでは」と疑問を持ち、白い巨塔の中で努力をしていくことに魅力を感じなくなって。それよりも、「患者一人一人のために貢献すべき」と、医者の原点に立ち返り、それまで所属していた医局を辞めて、総合病院の部長職に思い切って移ったんです。
私の「その瞬間」は、白い巨塔を離れた日。移籍したその日から、大きく自分自身が変わりました。
それまでは上司には絶対服従でしたけど、総合病院では10歳上の先生に対しても、「そんなことは患者さんのためにならないので、私はいたしません」と言うようにしたんです。辞めさせられてもいいと覚悟し、タテついてました。大門未知子ほど過激じゃないですが(笑い)。
年配の医者が辞め、若い医師が増えた頃に僕の体制になったので、誰もが意見を言えるように改革しました。年功序列をやめ、患者のためなら研修医であろうと10年目の医者であろうと同じように発言、指摘できる環境づくり。そしたら若い医者が生き生きとしてきましたし、安全性も高まったように思いました。