友人の一言で 志茂田景樹さんが作家を決意した3つの出来事
76年発表の「やっとこ探偵」で小説現代新人賞、80年に「黄色い牙」で直木賞を受賞、バラエティー番組でも活躍した志茂田景樹さん(79)。作家になったのは3つのキッカケがあった。
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中央大学の5年生の時かな。留年時代に親しくしていた早稲田の学生がいましてね。彼は哲学や文学に興味を持つ連中ばかりが周りにいる人でした。
ある日、彼の部屋で飲んでいたら、彼が先に飲みつぶれてしまったんですね。その時、翌日締め切りの同人誌の原稿が書きかけで、「キミ、続きを書いてみる?」と言われ、こっちは真に受けて、寝てる間に書いてみたんです。
朝起きたら、彼は自分が言ったことを覚えていなかったけど、僕が書いたものを読んで真顔になり、「君、小説書けるんじゃないかな」って呟いたんです。その瞬間は僕の心にぐさりと突き刺さりました。
大学を卒業して職を転々とし、29歳、30歳の時は保険の調査員をやっていました。ある時、北陸方面に出張し、金沢から夜行の上野行きに乗りました。突然、耐えられないような腹痛に襲われました。痛みが治まればと思って、いつも駅で購入していたポケットウイスキーをボストンバッグから取り出し、一気飲みしたんです。そうしたら本当に痛みが治まっちゃって。眠りについて起きたら無事に上野駅に到着していました。