著者のコラム一覧
山田勝仁演劇ジャーナリスト

「対岸の絢爛」IR問題の闇に斬り込む火を吐くような論戦

公開日: 更新日:

 ギャンブル依存性が強い国民性に対する省察を通して描かれる物語は、家族の崩壊、消費増税に飽き足らず国家による国民の財産収奪というカジノ問題の本質に迫っていく。

 中津留得意の白熱したディスカッションドラマ。休憩なしの2時間40分と長丁場だが激しい言葉の応酬は力感にあふれ、まったく飽きさせない。

 クライマックスはカジノを推進する商工会議所の勉強会のシーン。

 推進派の代表(龍坐)と反対派の青年(長谷川景)、そして新聞記者(川崎初夏)の白熱した応酬が芝居のヤマ場だ。守勢に回る推進派が言葉に窮し、のらりくらりと論点のすり替え答弁を繰り返す姿は国会での安倍首相の「ご飯論法」そのもの。舞台ではそのごまかし話法に鉄槌を下そうとするのだが……。

 舞台の半分は観客のもの。物語の欠落部分を現実社会に持ち帰るのは観客しかない。今の時代状況に合わせたタイムリーな舞台だった。

 出演は倉貫匡弘、森下庸之、森田匠、長谷川景、川崎初夏、藤堂海、龍坐。7人が1人数役を早変わりで演じ、それぞれ圧倒的な熱量。特に推進派に対して火を吐くような論戦を挑む長谷川の鬼気迫る演技が見事。

 3月15日まで下北沢・駅前劇場。

 ★★★★

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕がプロ野球歴代3位「年間147打点」を叩き出した舞台裏…満塁打率6割、走者なしだと.225

  2. 2

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 3

    “玉の輿”大江麻理子アナに嫉妬の嵐「バラエティーに専念を」

  4. 4

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  5. 5

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 8

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 9

    大江麻理子アナはテレ東辞めても経済的にはへっちゃら?「夫婦で資産100億円」の超セレブ生活

  5. 10

    裏金のキーマンに「出てくるな」と旧安倍派幹部が“脅し鬼電”…参考人招致ドタキャンに自民内部からも異論噴出