「対岸の絢爛」IR問題の闇に斬り込む火を吐くような論戦
ギャンブル依存性が強い国民性に対する省察を通して描かれる物語は、家族の崩壊、消費増税に飽き足らず国家による国民の財産収奪というカジノ問題の本質に迫っていく。
中津留得意の白熱したディスカッションドラマ。休憩なしの2時間40分と長丁場だが激しい言葉の応酬は力感にあふれ、まったく飽きさせない。
クライマックスはカジノを推進する商工会議所の勉強会のシーン。
推進派の代表(龍坐)と反対派の青年(長谷川景)、そして新聞記者(川崎初夏)の白熱した応酬が芝居のヤマ場だ。守勢に回る推進派が言葉に窮し、のらりくらりと論点のすり替え答弁を繰り返す姿は国会での安倍首相の「ご飯論法」そのもの。舞台ではそのごまかし話法に鉄槌を下そうとするのだが……。
舞台の半分は観客のもの。物語の欠落部分を現実社会に持ち帰るのは観客しかない。今の時代状況に合わせたタイムリーな舞台だった。
出演は倉貫匡弘、森下庸之、森田匠、長谷川景、川崎初夏、藤堂海、龍坐。7人が1人数役を早変わりで演じ、それぞれ圧倒的な熱量。特に推進派に対して火を吐くような論戦を挑む長谷川の鬼気迫る演技が見事。
3月15日まで下北沢・駅前劇場。
★★★★