劇団東演創立60周年記念「マクベス」役者の身体性で魅了
モスクワ・ユーゴザパト劇場との提携公演。演出のV・ベリャコーヴィッチ(翻案・美術・衣装も)が2016年に急逝したため、現・芸術監督のO・レウシンがベリャコーヴィッチの演出を基に日本人スタッフと共同で作り上げたもの。
魔女にそそのかされるまま王殺しに手を染め、王位に上り詰めながら破滅する武将マクベスの物語はシェークスピアの四大悲劇の一つとしてなじみ深い。
舞台は2対の金属製回転扉があるだけの簡素なもの。それを魔女たちが開閉することで、人物の出し入れや時間と空間軸が移動。そのことで物語がスピーディーにスペクタクルに展開する。
魔女を演じるのは3人のロシア人男優と彼らの言葉を翻訳する「影」ともいえる2人の日本人男優。上半身裸で仮面を後頭部につけ、後ろ向きで移動する。腕と背中の筋肉の動きだけで表現する。役者の身体性に重きを置いた演出だ。
マクベスを演じた能登剛は権力志向の悪人というよりも、魔女と妻に操られ、心ならずも王位を簒奪(さんだつ)した小心で愚かな男というマクベス本来の性格づけをよく表現していた。