柳家系のネタを多く持つのは小さん一門の師匠連のおかげ
「あの番組は、落語ファンの間で賛否両論がありましたね。落語家の口演をアテレコに俳優さんが芝居をするんですが、イマジネーションの芸である落語を映像化するのはやぼだという意見があった。でも僕は賛成派で、落語の裾野を広げた功績があったと思うんです。特に、落語を聞いたことのない視聴者に、落語を身近に感じてもらえたはずです」
私も楽しく見ていた。落語家が毎回、口演する噺を、芸達者な俳優がどう演じるかが面白かった。特に、一之輔が「初天神」を演じた際、子供に扮した鈴木福には感心した。
「あの子は天才です。僕が『薮入り』をやった時の子役も福君でしたが、いい芝居してました。ただ、収録を見にいった時、父親役のピエール瀧さんに、『落語家さんって、どうしてそんなに速くしゃべるの』と言われました。落語家がしゃべる間合いと、芝居の間合いは違うんですね」
落語に合わせて演技をするのは難しいのだ。 (つづく)
▽春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)本名・川上隼一(かわかみ・としかず)。1978年、千葉県野田市出身。2001年、日大芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。前座名「朝左久」。04年、二つ目に昇進し「一之輔」と改名。12年、真打ち昇進。