弟子に対しても対抗心…落語家は大人げないほど負けず嫌い
一之輔の真打ち披露興行は2012年3月21日から、鈴本演芸場を皮切りに、末広亭、浅草演芸ホール、池袋演芸場、国立演芸場の順に各寄席を回った。
「抜擢昇進だからといって、仲間の妬みなんかはまるで感じなかったですね。それは僕でなく、師匠の人徳でしょう。一朝の弟子ということで優しく接してくれる。それに、真打ちがスタートという意識があって、昇進時期にこだわらなくなってましたし」
確かに、小朝が36人抜いて昇進した時代とは意識が違ってきたのだ。
「興行が始まっちゃうと、1日1席やればいいんで、気は楽です。その前の披露パーティーのほうが大変でしたね。準備は全部自分でやってましたから。『興行中は毎晩打ち上げがあって、披露口上に並んでくれた幹部師匠連をもてなすのが大変だよ』と聞いてましたが、打ち上げが大好きな幹部連は、皆さんお年を召して、朝まで飲み明かすこともなかった。後輩の若手と一緒に飲みに行くことが多かったので、これも楽でした」
どこの寄席でも師匠の一朝が口上を述べ、1席演じるのが慣習だ。