柳家系のネタを多く持つのは小さん一門の師匠連のおかげ
真打ち昇進後の一之輔の活躍は目覚ましかった。寄席、ホール落語会、独演会など、毎日どこかで落語を演じる日々が続く。
ネタ数の多い割に、出来の悪い高座が少ないとの定評だった。
「師匠に教わった噺よりも、他の師匠連に稽古をつけてもらった噺のほうが多いです。よく稽古してもらったのが柳亭市馬師匠。現落語協会会長です。それから入船亭扇遊師匠、柳家小里ん師匠。柳家系のネタを多く持っているのは、小さん一門の師匠連のおかげです」
一之輔の活躍はテレビ界も注目した。
「NHKの『プロフェッショナル・仕事の流儀』が取り上げてくれたんです。出演依頼を受けた時、『僕の人生や日常は、まるで波瀾万丈なんてことのない平凡なものですから、追っかけても面白くないですよ』って言ったんです。なのに、かなりの日数をかけてカメラが付いてきた。地方の小さな落語会まで取材に来て大変でした」
それまでこの番組に出演した落語家は、柳家小三治だけ。30代の若手真打ちが、売れっ子落語家の代表のように取り上げられたから、反響は大きかった。2016年、NHKで、古典落語をドラマにして映像化する「超入門!落語THE MOVIE」が始まる。一之輔はこれにもたびたび出演した。