小三治会長が大抜擢 21人抜きのスピード昇進で真打ちに
2011年当時の落語協会会長は、現人間国宝の柳家小三治であった。小三治会長は任期中、「鶴の一声」で数々の英断を下し、評価が高かった。一之輔の真打ち昇進もそのひとつである。
「昇進のことを知ったのは、ネット情報なんです。携帯に、『一之輔さん、真打ち昇進おめでとう!』とあったのを見て、何のことやらと。夜、一門会で会った師匠に、『真打ちになるって本当ですか』って尋ねると、『そんなこと、聞いてないよ』と言う。協会に電話したら、事務員さんが、『昼間っから一朝師匠に電話してるんですが、出ないんですよ』と。師匠の携帯が充電切れだった。すぐ充電すると、確かに留守電が何本も入ってる。最後の3本は小三治会長からで、『おめでとう。弟子の一之輔の真打ちが抜擢で決まった。これ聞いたら、連絡ください』というメッセージが1本目。2本目が、『ずいぶん忙しいようだね。連絡ください』で、3本目が、『真打ち、取り消してもいいんだけど……』(笑い)。師匠、あわてて会長に電話して、謝った後、『当人の意見を聞いてみますので』と言った。これはなかなか言えないことです。うちの師匠、凄いなと思った」