NYの地下鉄で…心臓が縮み上がる俺の恐怖体験を聞いてくれ
前回は、ロサンゼルスのドジャースタジアムのベースボールショップにおいて、世界のホームラン王、王貞治さんに見事(?)なりすました話を書きました。今回は東海岸ニューヨークにメジャーリーグを観戦に行った時の話なのだ。
年代はおそらく90~92年くらいと思われる。なぜかというと、これは後ほど大変に重要なポイントになるので覚えておいて欲しいのだが、89年に俺の愛する阪神タイガースにセシル・フィルダーという長距離打者が入団したのである。フィルダーはその年、38本のホームランをかっ飛ばす大砲ぶりを見せたが、惜しくも1年で阪神を退団……。
さあ、それからがアメリカンドリームの幕開けであったのだ。MLBのデトロイト・タイガースのユニホームを着ると変化球の多い日本の野球で打撃を学んだようで、90年51本、91年44本と2年連続ホームラン王に輝き、90年から92年まで3年連続の打点王の栄冠まで手中に収め、メジャーの大・大・大ヒーローに君臨していたのだ。
さて、話はフィルダーをひとまず横に置いておいて……当時のニューヨークの街は荒れ放題。地下鉄の車両は元のデザインがまったく見えないくらいスプレーで落書きされていたし(ニューヨークだけどそこにアートはみじんもなく、ただ乱れた文字の羅列以外の何ものでもなかった)、そしてヤンキースは古くはベーブ・ルースが在籍したことでも知られる名門中の名門球団ではあるが、本拠地ヤンキースタジアムまでの車窓の風景はまさにスラム街だったのだ。