「社台ファーム」吉田代表は日本ダービーをさらりと当てた
当時、毎年全国長者番付のベスト10に入る吉田氏。どれぐらい稼いでいるのか聞いてみた。本人は「わからないな」と言葉を濁したが、同席していた秘書が耳打ちしてくれた。
「うちの社長は毎月、どれだけ稼いで、どれだけ使っているか(種牡馬の購入など)多分、知らないと思う。頭の中は、いかに強い馬をつくることしかない。そのためにはお金を惜しまない」
「ハイリスク・ハイリターン」といわれる競馬界。生産者からその戦いは始まっている。競馬には誰よりも精通している吉田氏だが、なぜか馬券は買わない。
「僕が馬券を買ってもしょうがないでしょう。自分の頭の中で予想してレースを見ているだけで十分です」と言う。
取材は2000年のダービー1カ月前だった。
「今年のダービーは前評判通り、吉田さんの馬で絶対といわれていますが」と聞くと、即座にこう答えた。
「普通に走ればうちの馬だろうけど。もし負かすとすれば、河内(洋騎手)の馬だろうね」とさらっと言ってのけた。自信ありげに聞こえた言葉は現実となった。ダービーは河内騎乗の3番人気・アグネスフライトが①着。吉田氏所有の武豊騎乗の1番人気・エアシャカールは鼻差で②着だった。言っていた通りの結果に驚くばかりだった。