アンガールズは「東京の方がいいよ」の社交辞令を信じ上京
“キモカワ”芸人として独自の地位を確立したアンガールズ。芸人さんの持つガツガツ感、グイグイ感を意識的に排除しているのか、ありのままなのか、素人っぽさを残しながらも、コントになるとキャラクターを生かした上でよく練られたものを見せてくれるギャップが魅力です。
まだ21世紀になる前、1990年代、吉本は地方の企業などとタイアップで「吉本虎の穴」と称する「タレントオーディション」というイベントを各地で行っていました。現実は「オーディション」とは名ばかりで、企業の販売促進の一環として「おでかけ素人名人会」という様相が強かったものです。私はそのいくつかのイベントに「漫才作家・NSC講師」として審査員に名前を連ねていました。その広島大会にやってきたのがアンガールズでした。2人ともまだ大学生で、落語研究会でも漫才同好会でもなく、お笑いとは全く関係のない部活をやっていて、いわば「冷やかし出場」なのだと当時は思っていました。
正直なところ、どんなネタをやっていたのか全く記憶にありません。進行上「プロになりたいの?」と聞くと「はい」という返事だったので「キャラクターはおもしろいけれど、大阪では受け入れられづらいと思うから、(芸人を)やるなら間口の広い東京の方がいいと思うよ」とアドバイスのように聞こえますが素人出場者への“社交辞令”を言って、そのまま完全に記憶から消えていました。