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原田曜平マーケティングアナリスト・信州大学特任教授

1977年、東京都生まれ。マーケティングアナリスト。慶大商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーなどを経て、独立。2003年度JAAA広告賞・新人部門賞受賞。「マイルドヤンキー」「さとり世代」「女子力男子」など若者消費を象徴するキーワードを広めた若者研究の第一人者。「若者わからん!」「Z世代」など著書多数。20年12月から信州大特任教授。

クロちゃん大いに語る「大人数は苦手、先輩芸人の誘いも断る、今のお笑いは全然わからない」

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クロちゃん(芸人)

 今回のゲストは安田大サーカスクロちゃん(44)。近年は「水曜日のダウンタウン」(TBS系)のドッキリ企画などピン芸人としてもブレークし、若者世代からの人気も高い。自身の現状やテレビ業界、お笑い界について何を思うのか。クロちゃんに訊く令和の芸人論! 

  ◇  ◇  ◇

■初対面はハゲ会

原田「僕がメディアに出始めた当初からSNSに『クロちゃんに似ている』という書き込みがたくさんあったんですよ。そんななか、僕が出張で2016年11月の『AbemaPrime』に出演できなくなったとき、代理でクロちゃんが番組に出てくれたんです」

クロちゃん「僕も友達に『今テレビに出てるね』と言われて見たら原田さんでした(笑い)。『AbemaPrime』は真面目な報道番組なのに、なんで僕が呼ばれたのかと不思議だったけど理由は見た目だけでした(苦笑い)」

原田「初対面も印象深いです。番組で知り合ったブラックマヨネーズの小杉さんと『くだらないけどハゲだけ集めて飲み会やろう』と盛り上がって西麻布のオシャレなお店にハゲが集まったんです。メンバーは私、クロちゃん、小杉さん、(フットボールアワーの)岩尾さん、(品川庄司の)品川さんの5人」

クロちゃん「品川さんはハゲじゃないけど“潤滑油”として参加してくださいました。第1回には不参加でしたがトレンディエンジェルの斎藤さんにも声をかけていて、『第2回ハゲ会』を開催しようと言っていたらコロナになってしまったんですよね」

原田「落ち着いたら、ぜひやりましょう。さて、クロちゃんは『水曜日のダウンタウン』のドッキリ企画や、『モンスターハウス』『モンスターアイドル』などで“ゲスキャラ”として10代の若者からも大人気です。自身の現状をどう分析されていますか」

■ドッキリはNGなし?

クロちゃん「いいも悪いもかなり影響のある番組で人生が変わったというか変えられたというか……。国民全員から『嘘つき』って言われるタレントも珍しいですよ。思い描いた未来とまったく違いますからね。僕はもともとアイドルや歌手になりたかったのですが、松竹芸能に半ばダマされて芸人になったんです。『売れたら好きなことできるから』と言われて、団長とHIRO君と安田大サーカスを結成したのですが、いつまでも歌の練習もアイドルみたいなこともさせてくれない。次第に目隠しをされてどこかに連れていかれるドッキリが増えて今に至ります」

原田「ドッキリは24時間365日いつでも仕掛けていいと表明しているんですか?」

クロちゃん「言ってないです! だいたい休みだと思っていても、いきなり目隠しされて連れてかれるから予定が台無しになるんですよ。番組スタッフに『クロちゃんはNGなしですか』と聞かれたとき、マネジャーが『死ぬ以外は大丈夫ですよ』と言ってたのを聞いて神経を疑いました」

原田「ドッキリかなと気づくことは?」

クロちゃん「それが全然。逆におかしいと思ったときはドッキリでも何でもないんです。前に、雑誌の表紙の撮影があってヘアメークの女性がやたらエロい格好をしていたんですよ。まず、僕が表紙っておかしいし、2人きりになるタイミングが多いしドッキリだと思ったから、わざと口説いてLINE交換もしたんですけど全然ドッキリじゃなかった。あと、タクシーに乗ったら行き先を言っても全然違う場所に行くのでドッキリだと思って、愛想よく『違いますよ、ワワワワァー』ってやってたら、ただ道を知らない不慣れな運転手でした」

原田「見破れないもんですね」

クロちゃん「違和感があっても『たまたまそういうもんかな』と思っちゃうんですね。『水ダウ』の“おかげ”なのか“せい”なのか、いつカメラで撮られているかわからないので、例えば、ごみのポイ捨てとか世の中のルールを破るようなことは、絶対しないようにしています。だからモラルがあるって最悪ですけど」

原田「そもそもクロちゃんはどんな少年時代でしたか?」

クロちゃん「小中学生のときは学級委員長や生徒会長をしていた優等生でした。言葉遣いも丁寧だったので周りの大人から『黒川君はきちんと挨拶ができて偉いね』と褒められていました。曲がったことが嫌いで、自転車が倒れていたら直したり、赤信号も絶対渡らなかったり。『ルールは守るためにある』と信じて疑わない子どもでした」

SNSは罵詈雑言の嵐

原田「そんな正義感の強い心優しい黒川少年が、今や『嘘つき』と言われている。それは芸人としてはうれしいもの?」

クロちゃん「いやいや地獄ですよ。SNSでもボロクソです。『おはよう』と書いただけで『もう起きやがった』『永眠してください』って叩かれるんですよ。最初は『なんでそんなに?』と思っていたけど最近は『この人たちはどういうつもりで言っているのか?』という思考に変わり始めました」

原田「理由を知りたいんですね」

クロちゃん「はい。そしたらあるとき大阪のイベントでおばちゃんファンが差し入れをくれたんです。で、『私、クロちゃんをフォローしていて結構辛辣なことを書いているんですよ』と。ツイッターネームを聞いたら3本の指に入るほど僕の悪口を書いている人でした(苦笑い)。ちょっと待って、なんで来たのと怖くなりましたけど、もらった差し入れを見ると、僕がテレビでよく食べているグミと、よく臭いと言われるから除菌グッズが入っていました。あと、イベントの数日前に唇をケガしたまま自撮りした写真をインスタにアップしていたんですけど、その写真を見て、リップクリームも入ってたんです」

原田「クロちゃんのことをよく見てるし、よく考えてくれている。それはもうファンですね」

クロちゃん「アンチだと思っていた人がアンチじゃないんだと思いました。だから、僕のSNSに書き込む人はファンかサイコパスかのどちらかだと思うようにしたんです」

原田「ポジティブですね(笑い)」

クロちゃん「文句や悪口を言っている人って、本当に僕のことを嫌いな人もいるかもしれないけど、逆に考えると、それだけ僕のことを見て言っているので好きになる可能性もあるんですよ。僕はそもそも悪いことはしてないし、SNSに関しては腹を立てて冷静さを欠くと相手と同じレベルになってしまいます。それは自分が損をするなと思って。客観的に見ようと思っています」

原田「自己分析ができているうえに、意外に策士なんですね」

「絶対にコロナ前と同じ暮らしには戻らない。だから…」

 爆笑ハゲ対談の後編は昭和、平成とは異なる令和時代の芸人気質、そしてクロちゃんの結婚観に原田曜平氏が迫る!

 ◇  ◇  ◇

原田「最近のお笑いはぺこぱさんが否定しないツッコミでブレークするなど、優しくて柔らかい印象の人が増えています。その一方で、クロちゃんのいじられ方はかなりハードです」

クロちゃん「僕だけコンプライアンス基準が違うって感じですよね(苦笑い)。誰だったか忘れたんですけど、『クロちゃんって、やられてても悲壮感がなくて、かわいそうだと思われないからいいよね』って。いやいや僕だって悲壮感出てますから」

原田「芸人の気質も世代によって変わってきていると感じますか」

クロちゃん「昔は売れている先輩が軍団をつくって、売れていない後輩がくっついているイメージがありましたけど、今は先輩後輩の仲は良くても、特定のグループに所属している若手は少なくなっている気がします」

原田「クロちゃん自身は、どこかの軍団に?」

クロちゃん「僕は昔から大人数が苦手で、ひとり仲のいい後輩がいてくれたらいいタイプ。何人かでワイワイやるってお金がかかるし、大人数だと楽しくない人だっているだろうし、僕も気を使うし、悪口を言われるのも嫌だし、デメリットばっかりだなと。今はワンワンニャンニャンの菊地という後輩とばっかりいます」

原田「つるむのは好きじゃない」

クロちゃん「基本的にひとりが好きなんです。今はウオーキングにハマっていて、ひとりで歩く分にはコロナ禍でも大丈夫かなと。薬局の前に立っているケロちゃんやサトちゃんとかのキャラクターが好きで、写真を撮って、『今日も挨拶してくれたよ』ってSNSにアップしたりしてます」

原田「……」

クロちゃん「先輩に誘われても嫌だなと思ったら嘘をついて断ってますし、行ったとしても先輩の狙っている女の子にちょっかいかけて『コイツ腹立つわ』と思わせて次から誘われないようにしています」

原田「(苦笑い)。お笑い界も世代交代や競争が激しくなっています。クロちゃんの今後の展望を教えてください」

クロちゃん「芸人という仕事は面白いと思います。でも、僕はもともとお笑いを見て育ってきたわけではないので正直よくわからない。若手の多くがM―1やキングオブコントといった賞レースに挑みますし、芸人なら必見だと思われがちですが僕は見ていない。今のお笑いネタの作り方って、最初に振っておいて最後に回収するとよく言われてますけど、僕は回収する前に最初の振りを忘れちゃう(笑い)。好きな芸人はアクセルホッパーのキャラに扮する永井佑一郎さんとかリズムが軽快なネタで、今のお笑いは全然わからないんです」

「ギャル好き」の意外な理由

原田「結婚願望は?」

クロちゃん「もう44歳なので今すぐにでも。ただ、今はコロナ禍なので人と会ったり、キャバクラ行ったり全然していないんですよ。だから、コロナが収まってから動き出そうと思っています」

原田「ギャル好きで有名ですよね(笑い)」

クロちゃん「ギャルって健康的でよくないですか? もちろん見た目も好きなんですけど、ギャルって告白してダメでも、次の日にテンションが高かったら『あれ? 今日ならワンチャンあるのかな』と思わせる陽気な空気がある気がして。一緒にいるだけで楽しめちゃう、元気にしてくれるんですよね。あと、ギャルって実は真面目な子が多いと思うんですよ。ギャルの世界って縦社会だから、ギャル以外にはタメ語でちょっと偉そうでも、ギャル同士の中ではしっかりしている。実はできる子が多いし、そういうところは信頼できるなって」

原田婚活はコロナが落ち着いてからということですが、コロナ前後で生活や価値観の変化はありました?」

クロちゃん「僕は絶対にコロナ前と同じ暮らしには戻らないと思っているんです。オンラインイベントやリモート収録など、直接お客さまや仕事相手と会わずともビジネスとして成立することが判明したので、そこに取り残されないようにしようと思いました。だから、ティックトックやクラブハウスなどの配信系に力を入れています。今日は21時に仕事が終わるのですが、22時くらいからたかみな(高橋みなみ)とクラブハウスをして、その後、ティックトックの生配信をして、ツイッタースペース(ツイッター上で音声を使ってリアルタイムで会話する方法)をして、またクラブハウスに戻って、全部が終わると夜中2時すぎますよね」

原田「基本的にギャルがやっていることはやるんですね(笑い)」

クロちゃん「単純に面白いし好きなんです。あと女性が絡むとやる気ががぜんアップしますね。一時期ハマったボルダリングは程よい筋肉のあるスリムな女性がやっているイメージがありましたし、格闘技のカポエイラも段を取るまでやっていたのですが、インストラクターにきれいな人が多かったので『彼女もできるかな』という下心もありました。ピアノも美人姉妹に教えてもらっていて、姉妹のどちらかと付き合いたいと思っていました。煩悩が関わるとやる気も出ますよ。原田さんも何かハマっていることないんですか?」

原田「今はおいしい店で食事くらいですかね」

クロちゃん「女の子を連れていけるいい感じの店教えてください! 本気度によって使う金額が違うんですけど(笑い)」

原田「それじゃあ松竹梅で教えますよ(笑い)」

(構成=高田晶子)

▽クロちゃん 1976年、広島県生まれ。本名・黒川明人。安田大サーカスのメンバー。松竹芸能所属。身長171センチ、体重100キロ。趣味・特技はピアノ、社交ダンス、アロマ、カポエイラ。

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