2年ぶりに帰ってきた海老蔵! 1人で5役「雷神不動北山櫻」演じる
第2部もおなじみのもの2本立てだが、配役がおなじみではないところに、一応の工夫はある。
「身替座禅」も昨年11月に菊五郎と左團次で、先月に博多座で菊之助と時蔵で上演され、上演頻度が高い。今回は、松本白鸚と中村芝翫の初組み合わせ。白鸚は1986年に17代目勘三郎と演じて以来。そのときは玉の井だったが、今回は山蔭右京を初役で演じる。
白鸚は襲名以後、いままで演じてこなかった役に積極的に取り組んでおり、これもそのひとつ。ミスキャストなのだが、だからこそ面白いという、かくし芸的な面をみせてくれる。芝翫の玉の井は怖いだけで愛嬌がなく、見ていてつらい。
「鈴ヶ森」は中村錦之助と尾上菊之助。錦之助が幡随院長兵衛を歌舞伎座で演じるのは初めて。吉右衛門と日替わりで演じる予定だったが、吉右衛門が倒れたため、全日程を錦之助が演じる。吉右衛門のような貫禄が出ないのは当然で、菊之助の白井権八が、錦之助に対して立派過ぎる。これまでにどれだけ主役として舞台を踏んできたかの差が見えてしまう。これはどっちの責任でもない。
錦之助はこれまでは配役では不遇だったが、上の世代が少なくなってきたので、チャンス到来である。息子の隼人のほうがテレビ時代劇で主役を演じ、知名度も高くなっている。どことなく遠慮がちなイメージなので、開き直ってほしい。
(作家・中川右介)