<27>ブランド品で身を固めていた早貴被告 ドン・ファンとは背が釣り合わない
「明日のお昼に銀座でお会いできませんか?」
「あの天ぷら屋さんですか?」
「そうや」
「いやあ、明日の昼は空いていません。夕方にホテルに行きますから」
「それは残念やな」
誘われたのは座って1人ウン万円の誰もが知る銀座の老舗天ぷら屋さんだった。もっともスケジュールうんぬんはウソで、私には油が重くて好みではなく、いつしか断るようになっていた。
田辺市内で行きつけにしていた老舗割烹も同じだ。刺し身のお造りや天ぷらなどが売りなのだが、たいしておいしくないのに値段だけは超一流だった。私は誘われても生ビールを少し口にするだけで、せいぜい酒のアテとして鯛子の煮付けを頼むぐらいだった。
早貴被告がここに来た時に頼むのは、いつも地元のブランド牛の熊野牛のステーキだったのだから笑ってしまう。懐石料理をつまむドン・ファンと向かい合ってステーキを頬張る嫁……。だれもが違和感を覚えるような光景だが、早貴被告はそんなことを気にするような性格ではなく、ゴーイングマイウエーだった。 =つづく