<58>裏庭に土葬することになった愛犬イブ 早貴被告はゲームに夢中だった
翌朝も従業員はイブの腐敗を防ぐために、買ってきたドライアイスを周りに置く作業をしていた。
「何日ぐらい持ちますかね?」
リビングで社長と向き合っていたが、早貴被告はゲームに夢中らしく、話に加わらなかった。
「ボクも正確には分かりませんけれど、そのうち異臭がしてきますよ。社長は一生、イブちゃんの遺体と暮らせばいいじゃないですか」
突き放したように言った。
「火葬は嫌なんですよ」
「じゃあ、土葬にすればいい。玄関脇はスペースがないから裏の庭に造ればいいんじゃないですか?」
「裏?」
「ほら、鳩にエサをやっているところです」
従業員に毎朝、鳩のエサをまくように命じていた場所だ。飼い鳩ではなく野良鳩だったが、毎朝10羽近くがエサにありつこうと集まっていた。愛犬を可愛がるのは誰もが理解できるだろうが、野良鳩が可哀想だからとエサを量販店で買ってきて毎朝与える優しさも持ち合わせていたのである。