<85>早貴被告は「警察が疑っているから早くお金を手にしたい」と言った
野崎幸助さんが亡くなった2日後の5月26日、夕方遅くになって田辺署から「遺体を渡せます」と連絡が来た。そこで遺体を運ぶ車がある葬儀屋さんに連絡を取ると「明日の朝に行けます」との返事が来たので、27日の午前10時前に、私と早貴被告が一緒に車で田辺署に向かうことにした。
「なんで『2億円くれれば……』と言ったんだい? キミは社長を殺していなければ黙っていても遺産が手に入るんだから、急ぐ必要はないじゃないか」
2人きりの車の中で私は彼女に聞いた。
「私は(犯行を)やってはいないけれど、警察が疑っているから早くお金を手にしたいんです」
「そんな理屈は通らないよ。やっていないなら堂々としていればいいし、やったら自首すればいいんじゃないのか?」
彼女からはこのことについて返事はなかった。
「キミはアレを飲ませれば亡くなるということを知らなかったんじゃないかい? そうなるとキミの罪は軽くなるじゃあないか」