<108>「私、逮捕されるの?」家政婦の大下さんは深刻な表情でポツリ
傍らにいた私服の若い女性警官はうなずきはしたが、費用を出すとは言わなかった。彼女にそのような権限がないことぐらい私も分かっているが、後日、大下さんの申し立ては認められて警察から交通費が支払われたと聞いている。
早貴被告が乗る飛行機には、どこから現れたのかワイシャツ姿の男性記者が3人ほど同乗していた。機内での彼女を撮影するのが目的のようだ。
「お茶でも飲もうか」
空港を離れてから大下さんと私はマコやんの行きつけの町内の喫茶店に向かった。
「私、逮捕されるの?」
モーニングメニューを注文して3人で待っていると、大下さんが深刻な表情でつぶやいた。
その前日の夜、田辺警察署で取り調べを受けた大下さんと早貴被告は夕方に自宅に戻ると、私とマコやんを交じえて長いこと話し込んでいた。
「取り調べ内容を吉田にはしゃべらないように、と捜査員にクギを刺されたわ」
「私も言われた」