<130>凄まじい遺族の怒り「兄が長年築き上げたものを壊すのは許せない」
「オヤジ(野崎幸助さんのこと)は遺言を残すようなタマじゃないよ」
和歌山家庭裁判所田辺支部に「いごん」を提出したMは、通夜の前から周囲にそのように言い放っていたし、私もしっかり耳にしている。それからわずか半月後に「送られていたことを思い出した」とMは説明しているが、こんな大事なことを失念するなど、あり得ないだろう。
封筒の欺瞞を暴くことができたので、私はこのカラクリを記事にしたし、週刊新潮も取り上げたが、裁判所は動かなかった。というのも遺族が遺言無効の訴えを起こさなかったので、田辺支部は粛々と遺言有効で動き始めたからである。
しかし、私はこのウソの遺言を認めるわけにはいかなかった。一円の得にもならないが、明らかな不正をそのままにしておくほど私は寛容な性格ではない。
「社長の恨みは必ず晴らしてみせます」
火葬場で固く誓ったことは片時も忘れることがないばかりか、次から次へと現れてくる難題を解決することに使命を感じるようにもなっていた。