著者のコラム一覧
碓井広義メディア文化評論家

1955年長野県生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。千葉商科大学大学院政策研究科博士課程修了。博士(政策研究)。81年テレビマンユニオンに参加。以後20年、ドキュメンタリーやドラマの制作を行う。代表作に「人間ドキュメント 夏目雅子物語」など。慶應義塾大学助教授などを経て2020年3月まで上智大学文学部新聞学科教授。専門はメディア文化論。著書に「倉本聰の言葉―ドラマの中の名言」、倉本聰との共著「脚本力」ほか。

NHK土曜ドラマ「17歳の帝国」は現代の寓話 AIで既存の政治にはできないことに挑む

公開日: 更新日:

 土曜ドラマ「17才の帝国」(NHK)の舞台は、経済が戦後最大の落ち込みを見せる202X年の日本。政府は地方の青波市を特別区に指定し、量子コンピューターを使った実験政治を始める。

 政治AI・ソロンが選んだ若者たちが「閣僚」となったが、総理大臣の真木(神尾楓珠)は17歳の高校生だ。就任演説では「透明で、謙虚で、人を救う政治」を宣言した。市長など大人の政治家たちは皆、苦い顔だ。

 しかも真木はライブ配信の閣議で「市議会廃止」を提案する。市民の声はソロンが収集・分析し、それを反映させた政治を行うというのだ。

 ドラマは、このあたりから俄然面白くなってきた。何しろ、当たり前と思われてきた「議会制民主主義」を、あえて一蹴してみせたのだから。果たして新聞記者の山口(松本まりか)が言うように、真木が目指すのは「独裁国家」なのか。

 その一方で、真木は地元商店街の再開発に「待った」をかけた。ソロンを駆使して住民投票を実施。政治家とゼネコンの癒着や思惑を崩していく。

 先週、真木が育った家庭環境やヤングケアラーの体験が明かされた。政治を「公助」の視点で捉えていることも伝わってきた。そんな真木がAIの力を借りて、既存の政治にはできないことに挑む。吉田玲子(「けいおん!」など)のオリジナル脚本は、現代の寓話だ。

■関連キーワード

最新の芸能記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    自信なくされたら困るから? 巨人・田中将大がカブス戦登板「緊急回避」の裏側

  2. 2

    「相棒」芹沢刑事役の山中崇史さんが振り返る俳優人生…地下鉄サリン事件「忘れられない」

  3. 3

    前代未聞の壮絶不倫・当事者のひとりがまたも“謎の欠場”…関係者が語った「心配な変化」とは???

  4. 4

    巨人阿部監督が見切り発車で田中将大に「ローテ当確」出した本当の理由とは???

  5. 5

    西武・鳥越裕介ヘッドコーチ「厳しく指導?僕は基本、怒らないんですよ。ただ…」

  1. 6

    巨人・田中将大の早期二軍落ちに現実味…DeNA二軍の「マー君攻略法」にさえなす術なし

  2. 7

    ニデック永守重信会長の堪忍袋の緒が切れる? 「売上高4兆円」達成に不可欠な牧野フライスの買収が難航中

  3. 8

    兵庫県・斎藤知事パラハラ認定にも無敵の“居座り” 「公務多忙」理由に第三者委報告書にコメントしない厚顔

  4. 9

    佐々木朗希「通訳なし」で気になる英語力…《山本由伸より話せる説》浮上のまさか

  5. 10

    復権狙う自民旧安倍派にトドメ!「10万円商品券」配布問題でチルドレンが石破首相に“助け船”の爆弾証言