NHK土曜ドラマ「17歳の帝国」は現代の寓話 AIで既存の政治にはできないことに挑む
土曜ドラマ「17才の帝国」(NHK)の舞台は、経済が戦後最大の落ち込みを見せる202X年の日本。政府は地方の青波市を特別区に指定し、量子コンピューターを使った実験政治を始める。
政治AI・ソロンが選んだ若者たちが「閣僚」となったが、総理大臣の真木(神尾楓珠)は17歳の高校生だ。就任演説では「透明で、謙虚で、人を救う政治」を宣言した。市長など大人の政治家たちは皆、苦い顔だ。
しかも真木はライブ配信の閣議で「市議会廃止」を提案する。市民の声はソロンが収集・分析し、それを反映させた政治を行うというのだ。
ドラマは、このあたりから俄然面白くなってきた。何しろ、当たり前と思われてきた「議会制民主主義」を、あえて一蹴してみせたのだから。果たして新聞記者の山口(松本まりか)が言うように、真木が目指すのは「独裁国家」なのか。
その一方で、真木は地元商店街の再開発に「待った」をかけた。ソロンを駆使して住民投票を実施。政治家とゼネコンの癒着や思惑を崩していく。
先週、真木が育った家庭環境やヤングケアラーの体験が明かされた。政治を「公助」の視点で捉えていることも伝わってきた。そんな真木がAIの力を借りて、既存の政治にはできないことに挑む。吉田玲子(「けいおん!」など)のオリジナル脚本は、現代の寓話だ。